睡眠まとめ
人間における睡眠の生理的メカニズム
人間における睡眠サイクルの概要としてよく用いられるのが"two process model of sleep"である。このモデルにおいて睡眠は概日リズムCと体内のホメオスタシスSによって把握され、睡眠の負債がたまり(Sが上昇し)概日リズムが低下する(Cが下降)すると睡眠が発生すると考えられている。
概日リズム
人間の脳において概日リズムを司っているのは視交叉上核(SCN)である。SCN単体では24時間よりも少し短い周期で自律した振動を行うが、網膜内に存在するipRGC(錐体・桿体とは異なる第三の光受容細胞)から入力された光情報がSCNに到達することにより位相のずれが修正され環境の光に同期した概日リズム振動が発生する。この位相のずれは、主観的夜(概日リズムで夜だと判定されている期間)の前半に光が入力された場合は前に、主観的夜の後半に光が入力された場合は後ろに位相がシフトする形で表れる。分かりやすく言えば、「夜の早い時間に光を感知した場合はまだ昼だと判断し概日リズムを遅め、夜の遅い時間に光を感知した場合はもう朝だと判断し概日リズムを早める」ということである。概日リズムのどの段階で光がipRGC経由でSCNに到達するとどのような位相のずれが発生するのかを表したグラフはPhase Response Curve(PRC)と呼ばれる。
人間においては昼の2時ごろにいったん概日リズムが低下する[要出典]。
ipRGC
概日リズムを司るSCNに光情報を入力する役目を負うのが網膜内に存在するipRGC(intrinsically photosensitive retinal ganglion cell)である。この細胞内にはメラノプシンと呼ばれる光受容色素が存在し、特に短波長の青色の光に選択的に反応する。人間のipRGCに存在するメラノプシンであるOPN4-2の最大吸収波長は484nmである[2]。
光とメラトニンの関連について
赤い光を見なくても浴びるだけで睡眠の質が上がる?
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3499892/
中国の女性バスケ選手に2週間の間夜にアイマスクをして赤い光(658nm,30J/cm^2)を浴びさせたら睡眠の質とメラトニン量が上がった マラソンの距離もちょっと上がったけど有意なレベルではない(p=.07)
メカニズムがよくわからない(論文には一言も書かれていない)
赤い光と青い光を浴びせたら青い光の時だけメラトニン分泌が落ちた
The Effects of Red and Blue Lights on Circadian Variations in Cortisol, Alpha Amylase, and Melatonin
いろいろな光の元で被験者のメラトニン量を測ったら特に青(470nm)、青緑(497)、緑(525)でメラトニン分泌量が減った
概日リズムと体温
一般に、人間は深部温度(core body temperature, CBT)が低下することによって眠りやすくなると言われている。深部温度が一番低下するのは深夜3時ごろ。体の末梢部から熱を逃すために深部温度が低下する前に末梢温度(指など)が上昇する。
腕の温度と概日リズム
腕の温度は寝る10分前くらいに上がり始める
腕の温度は環境の温度の影響を受ける(暑いと日中腕の温度が下がりきらず、よって寝る前にも上がらない)
昼食の時間は夜の腕の温度上昇の時間に影響を与えない
昼食後に腕の温度が上昇するタイミングがあるが、これはシエスタをとっている時は大きく上昇する
日中30度を超えるような場合腕の温度はうまく測れない
体の体勢・寝室の環境・運動・食事・労働・余暇活動は腕の温度に影響を与える
概日リズムを計測するために腕の温度+加速度計を用いる可能性
指の温度と概日リズム
指の温度と深部温度、主観的眠さ、客観的眠さを被験者を夜通し起こす中で測定した実験。
SOLが客観的眠さの指標(低いほど眠い)、SSSが主観的眠さの指標(高いほど眠い)
概日リズムと血圧・心拍
血圧変動(heart rate variability , HRV)により眠気測定
赤から青へと一定周期で変化する光を浴びるとHRV及び幸福度が変化?
References
[1] Sleep. Very short introduction.
[2] 海老原ほか. 時間生物学. 化学同人